特定技能「ビルクリーニング」制度の全体像と実務ポイントを 徹底解説

はじめに

ビルメンテナンス会社、施設管理会社、ホテル・病院・商業施設の清掃現場で活用が進む特定技能「ビルクリーニング」。
このページでは、企業側が知っておきたい採用実務と、外国人本人が知っておきたい働き方・試験・キャリアの両方を、専門性を保ちながらわかりやすく解説します。

目次

ビルクリーニング分野の現状と人手不足

まず押さえておきたいのは、なぜこの分野で特定技能が活用されているのかという背景です。

ビルクリーニングは、オフィスビル、商業施設、病院、学校、宿泊施設などの衛生環境を支える重要な仕事です。
建物が安全で快適に使えるのは、日々の清掃が行き届いているからこそですが、現場では慢性的な人手不足が続いています。

背景としては、作業時間が早朝・深夜に及ぶことがある点、体力面の負担がある点、若年層の定着が難しい点、高齢化が進んでいる点などが挙げられます。

企業にとっては、案件はあるのに人が足りない、シフトが埋まらない、教育した社員が定着しない、といった悩みが現実的な課題になっています。

こうした状況の中で、一定の技能と日本語能力を持つ外国人材を受け入れられる制度として、特定技能「ビルクリーニング」が注目されています。

単なる人員補充ではなく、長く働いてもらえる環境づくりと組み合わせることで、現場の安定化に大きく役立ちます。

特定技能「ビルクリーニング」とは

制度の位置づけと、どのような現場で使えるのかをわかりやすく整理します。

制度の目的
人手不足が深刻な分野で、一定の技能を持つ外国人材の就労を認める制度です。
単純に誰でも働けるわけではなく、分野ごとの試験やルールが定められています。

対象施設
オフィスビル、病院、学校、ホテル、商業施設など、不特定多数の人が利用する建築物が中心です。
住宅の家事代行のような業務とは分けて考える必要があります。

働き方の特徴
受入企業との直接雇用が基本です。
現場作業だけでなく、継続就労のための支援体制や相談窓口の整備も重要なポイントになります。

企業側にとっては、採用難の打開策として有効であり、外国人本人にとっては、日本で安定して働きながら技能を高める機会になります。
つまりこの制度は、企業だけのためでも、外国人だけのためでもなく、双方にメリットがある形で設計されているのが特徴です。

特定技能1号の在留資格を取得した外国人は、最長5年間、要件を満たしたビルメンテナンス会社で働くことができます。

ビルクリーニングとは、事務所や学校、興行場、店舗など、不特定多数の人が利用する建築物の清掃業務のことです。
特定技能「ビルクリーニング」では、日常清掃、定期清掃などの清掃業務のほかに、一定の範囲であればホテル客室のベッドメイク作業にも従事できるようになりました。

特定技能「ビルクリーニング」には1号と2号がある?

特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があります。

外国人材が保持する技能レベルに応じて、特定技能1号と特定技能2号に分けられます。

特定技能2号は家族帯同が可能で、在留期限の更新回数にも上限はないため、長く働きたいと考えている外国人にとって待望の2号拡大となりました。
また、在留期限を更新し続けられれば、永住権を取得できる可能性があるかもしれません。

従事できる業務とできない業務

ここは実務上もっとも重要です。
制度の理解があいまいだと、不許可や運用ミスにつながります。

主たる業務
・床面の清掃、掃除機がけ、モップがけ
・トイレ、洗面所などの清掃
・窓ガラスや建具等の清掃
・ごみ回収、衛生環境の維持

関連業務
・資機材の管理、運搬
・建物外周の軽微な清掃
・客室のベッドメイク
・備品補充等の補助作業

注意したいNG例
・関連業務だけを担当させる
・家庭の清掃や家事代行を行わせる
・実際には接客業務が中心になっている
・職務内容が雇用契約書と現場実態でズレている

特にホテル系の現場では、ベッドメイクができるかどうかだけで判断してしまうと危険です。
ビルクリーニング分野では、あくまで建築物内部の清掃が中心である必要があり、関連業務はそれに付随する範囲にとどめる意識が大切です。

宿泊分野との違い

よく混同されるポイントなので、比較して理解すると整理しやすくなります。

ビルクリーニング宿泊
主たる業務建築物内部の清掃フロント、接客
レストラン補助等
ベッドメイク関連業務として可能宿泊サービスの一環
として可能
接客対応原則中心業務ではない重要な業務要素
向いている事業者清掃会社
ビルメンテナンス会社
ホテル、旅館など

ホテルで働くから自動的に宿泊分野、というわけではありません。
清掃会社として客室や共用部の清掃を請け負う場合、実際の業務内容によってはビルクリーニング分野が適切なケースもあります。
逆に、フロント対応やレストラン補助など接客を中心とするなら、宿泊分野の検討が必要です。

特定技能「ビルクリーニング」の1号を取得するには?

外国人材が特定技能「ビルクリーニング」1号を取得するには、どうすれば良いのでしょうか。

取得するための要件と、取得方法について解説します。

「ビルクリーニング」分野特定技能1号評価試験に合格する

外国人材が特定技能1号「ビルクリーニング」を取得するには、二つの方法があります。

一つ目は、「ビルクリーニング分野の特定技能1号評価試験に合格する」というものです。ビルクリーニングで特定技能1号の在留資格を取得するためには①技能試験(判断試験+ 作業試験)、②日本語能力を測る試験の両方の合格が必要となります。

ビルクリーニング分野の特定技能試験の概要は以下となります。

①技能試験
試験名:ビルクリーニング分野特定技能業評価試験
実施:公益社団法人 全国ビルメンテナンス協会
実施国:日本(北海道/宮城県/東京都/愛知県/大阪府/広島県/徳島県/福岡県)、ミャンマー、フィリピン、インドネシア、タイ、スリランカ、カンボジア

②日本語能力を測る試験
 日本語能力試験は(1)(2)のどちらかの試験に合格する必要があります

(1)国際交流基金日本語基礎テスト
必要レベル:合格
(2)日本語能力試験
必要レベル:N4以上

「ビルクリーニング」分野の技能実習2号からの移行

外国人材が特定技能1号「ビルクリーニング」を取得するための、二つ目の方法は、「ビルクリーニング分野の技能実習2号から移行する」というものです。

「技能実習2号」とは、技能実習制度に基づき、一定の期間に技能実習を行い、要件を満たすことで取得できる在留資格です。
今回、新しく「特定技能」の制度が整備されたことにより、外国人材は「技能実習生」から「特定技能」へ移行できるようになりました。
この場合、ビルクリーニング分野の特定技能1号評価試験は免除されます。

「ビルクリーニング」分野特定技能1号評価試験とは?

先ほどお伝えした通り、技能実習2号からの移行以外で外国人材が特定技能1号「ビルクリーニング」を取得するには、「技能試験」と「日本語能力試験」の、2つの試験で一定の成績をおさめる必要があります。

ここではビルクリーニング分野における特定技能試験について解説しますが、特定技能試験の制度についてはこちらの記事で詳しく説明しています。

ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験

「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」は、受験者が技能水準を満たしているかを評価する技能試験です。

ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験実施要領によれば、試験の水準は、「ビルクリーニング職種・ビルクリーニング作業の第2号技能実習修了相当の水準*」と定められています。

*場所、部位、建材、汚れ等の違いに対し、作業手順に基づき、自らの判断により、方法、洗剤および用具を適切に選択して清掃作業を遂行できるレベル。

受験資格
・試験日において、17歳以上の者
・国内試験の場合は、在留資格を有している方(「短期滞在」の在留資格も含む)

試験内容

課題標準時間制限時間
判断試験20分
作業試験作業1.
床面の定期清掃作業
10分12分
作業2.
ガラス面の
定期洗浄作業
作業3.
洋式大便器の
日常清掃作業

※試験は「判断試験」と「作業試験」により合否が決まります。

会場
試験は日本全国(北海道、宮城、東京、愛知、大阪、広島、徳島、福岡)で開催。そのほか、海外ではインドネシアやタイ、スリランカ、カンボジア、ミャンマー、フィリピンでも開催。

日本語試験に合格する

「ビルクリーニング」分野の特定技能資格を取得するには、日本での就業や生活が可能な日本語能力を持っている必要があります。
具体的には、日本語能力試験JLPTのN4以上、もしくは国際交流基金日本語基礎テストに合格しなければなりません。

日本語能力試験
日本語能力試験のレベルは5段階で、基礎のN5から幅広い場面で使われる日本語のN1まであります。
「ビルクリーニング」分野の特定技能資格取得に際し、日本語能力試験を受験する場合は、N4以上が必要です。

N4の日本語力は「基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる」「日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる」というレベルです。
試験は通常、年2回開催されます。

「国際交流基金日本語基礎テスト」
国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)は日本の生活場面でのコミュニケーションに必要な日本語能力を測定し、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力」があるかどうかを判定するテストです。

日本語能力試験に比べて開催日が多く日本国内ではほぼ毎日開催されています。

特定技能「ビルクリーニング」の2号 を取得するには?

ビルクリーニング分野の特定技能2号の在留資格を得るためには
「1.ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験」に合格するか
「2.ビルクリーニング技能検定1級試験」に合格する必要があります。

試験を受験するために現場管理の実務経験(2年以上)を証明する書類が必要です。
また、受験者が所属する受入機関の協力が必要となりますので、受験者と会社でよく相談してから申し込みましょう。

  1. 技能試験試験名:ビルクリーニング分野特定技能評価試験

    公益社団法人全国ビルメンテナンス協会実施国:
    日本(北海道/宮城県/東京都/愛知県/大阪府/広島県/徳島県/福岡県)、ミャンマー、フィリピン、インドネシア、タイ、スリランカ、カンボジア
    申込:公益社団法人全国ビルメンテナンス協会のホームページ

  2. 技能試験試験名:ビルクリーニング技能検定1級試験

    公益社団法人全国ビルメンテナンス協会実施場所:
    日本国内のみ(北海道/宮城県/東京都/愛知県/石川県/大阪府/広島県/徳島県/福岡県/沖縄県)
    申込:公益社団法人全国ビルメンテナンス協会のホームページ

特定技能2号の申請には上記の試験の合格に加えて、現場を管理する者としての実務経験を2年以上 有することが要件とされています

特定技能「ビルクリーニング」の外国人材を採用するには?

では、ビルクリーニング分野で特定技能外国人を採用するにはどうしたらよいのでしょうか。

特定技能外国人を雇用する企業のことを、「特定技能所属機関(受入機関)」と呼びます。
ビルクリーニング業で特定技能外国人を受け入れる特定技能所属機関(受入機関)は、次の条件をすべて満たす必要があります。

「建築物清掃業」または「建築物環境衛生総合管理業」の登録を受けている

特定技能「ビルクリーニング」の外国人材を採用するためには、以下のいずれかでなければなりません。

  • 建築物衛生法第12条の2第1項第1号に規定する建築物清掃業に登録している事業者
  • 建築物衛生法第12条の2第1項第8号に規定する建築物環境衛生総合管理業に登録している事業者

支援体制の義務を果たす

特定技能所属機関(受入機関)は特定技能外国人に対し、住居の契約の際に連帯保証人となるなど複数の支援をすることが義務付けられています。
ただし、受入機関はこの支援業務を「登録支援機関に委託する」ことができます。

ビルクリーニング分野の特定技能協議会への加入

厚生労働省が設置するビルクリーニング分野の業界団体、試験実施主体、制度関係機関その他の者で構成する「ビルクリーニング分野特定技能協議会」の構成員になることが義務付けられています。

在留資格の申請前に加入し、申請時に協議会の証明書が必要になります。

また、特定技能所属機関(受入機関)は、ビルクリーニング分野特定技能協議会の行う調査及び指導に対しての協力が求められます。

採用ルート別の特徴

海外採用
候補者の幅は広がりますが、面接調整、渡航、入国準備、入社までの期間が長くなりやすい傾向があります。
計画的な採用向きです。

国内転職
すでに日本で生活している外国人材を採用する形で、比較的スピード感があります。
日本での生活経験があるため、定着しやすいケースもあります。

技能実習から移行
業務との親和性が高ければ、現場理解があり、受入後のミスマッチが少ないことがあります。
実務上は非常に現実的なルートです。

どのルートにもメリット・デメリットがあります。
急ぎで人手を確保したいのか、長期的に複数名を採用したいのか、教育コストを抑えたいのかによって、最適な選択は変わります。

採用から就業開始までの流れ

STEP
受入可否の確認

まずは自社の業務内容や受入要件が制度に合っているかを確認します。

STEP
候補者募集・面接

候補者の経験、日本語力、希望条件を確認して面接を進めます。

STEP
雇用条件の整理

業務内容、勤務時間、賃金、住居支援などを具体的に整理します。

STEP
支援体制の確認

支援を自社で行うか、登録支援機関へ委託するかを決めます。

STEP
在留資格申請

必要書類を整えて在留資格の申請を行います。

STEP
入社・定着支援

入社後は仕事だけでなく、生活面・言語面も含めた定着支援が重要です。

企業にも外国人にもメリットがある制度にするために

制度をうまく活用するための考え方を整理します。

企業にとってのメリット

・慢性的な人手不足の改善につながる
・一定水準の試験合格者を採用できる
・長期的な人材育成の土台を作りやすい
・多様な人材の受入で現場が活性化する

外国人本人にとってのメリット

・日本で安定して働く機会が得られる
・実務経験を積みながら日本語力を伸ばせる
・将来的にキャリアアップを目指せる
・働く分野や生活環境を比較して選びやすい

大切なのは、制度を「安い労働力の確保」として捉えないことです。

仕事内容を明確にし、適正な待遇を用意し、相談しやすい環境を作ることで、企業にも外国人にもメリットのある採用につながります。
その姿勢が、結果として定着率や紹介にも結びつきます。

よくある質問

客室清掃だけでも特定技能「ビルクリーニング」で雇用できますか?

客室清掃やベッドメイクだけを行わせる形は注意が必要です。
ビルクリーニング分野では、主たる業務が建築物内部の清掃であることが重要で、関連業務のみを担当させる運用は避けるべきです。

外国人本人はどのような試験に合格すればよいですか?

原則として、ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験と、日本語能力試験N4相当以上またはJFT-Basicなどの基準を満たす必要があります。
対象となる技能実習を良好に修了した場合は、試験免除ルートが使えることがあります。

企業はどこまで支援しなければなりませんか?

生活オリエンテーション、各種手続きの補助、日本語学習機会の案内、相談対応など、特定技能制度に基づく支援が必要です。
登録支援機関へ委託する方法もあります。

どの採用方法が一番現実的ですか?

実務上は、国内在住の特定技能外国人や、技能実習からの移行人材が比較的スムーズです。
海外採用は候補者の幅が広がる一方、時間や調整コストがかかる傾向があります。

まとめ

最後に、特定技能「ビルクリーニング」のポイントを整理します。

特定技能「ビルクリーニング」は、深刻な人手不足に悩む清掃業界にとって、有力な採用手段のひとつです。
一定の技能と日本語能力を持つ外国人材を受け入れることで、現場の安定化やサービス品質の維持につながります。

一方で、制度を正しく活用するには、業務範囲の理解、宿泊分野との切り分け、受入企業としての体制整備、支援計画の実施など、実務上の注意点を丁寧に押さえる必要があります。

特に、ビルクリーニング分野では「何をさせるか」が重要です。
関連業務だけを行わせる運用や、契約書と実態のズレは、後から大きなリスクにつながることがあります。
だからこそ、採用前の段階で制度に合った設計を行い、申請から受入後の運用まで一貫して整理しておくことが大切です。

もし、自社で特定技能外国人を受け入れられるのか分からない、宿泊分野との違いに不安がある、支援体制や申請書類の整え方が分からないという場合は、早い段階で専門家に相談することで、無理のない形で制度活用を進めやすくなります。

行政書士カラフル事務所にご相談ください
行政書士カラフル事務所では、特定技能制度に関するご相談から、受入可否の確認、必要書類の整理、在留資格申請、登録支援機関に関するご案内まで、実務に沿ってサポートしています。

・自社の業務がビルクリーニング分野に当てはまるか確認したい
・外国人採用の流れを最初から整理したい
・不許可や運用ミスを避けて、安心して受け入れたい

制度は理解しているつもりでも、実際の現場に当てはめると判断に迷うポイントが少なくありません。
だからこそ、実務に強い専門家のサポートが重要です。
特定技能「ビルクリーニング」の採用・申請をご検討中の方は、行政書士カラフル事務所までお気軽にご相談ください。

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