特定技能の自動車整備とは?|仕事内容・試験・採用の流れを徹底解説

2019年4月、日本政府は人材不足に悩む業種において、外国人材を対象に新たな在留資格である「特定技能」を設けました。
自動車整備業界では、整備士不足が長く続いています。
とくに地方の整備工場やディーラー、車検事業者では、求人を出しても人が集まりにくく、経験者の確保が難しいという悩みが少なくありません。
その一方で、外国人材にとっても、日本の整備現場は高度な技術を学びながら安定して働ける魅力的な就職先になっています。
こうした中で活用が進んでいるのが、在留資格「特定技能」の自動車整備分野です。
この記事では、制度の基本だけでなく、実際にどのような仕事ができるのか、1号と2号の違い、必要な試験、技能実習からの移行、受け入れ企業の要件、そして現場で起こりやすい注意点まで、企業側と外国人側の双方に寄り添う形で丁寧に整理していきます。
特定技能「自動車整備」とは?
特定技能「自動車整備」は、自動車の点検、整備、修理といった専門的な仕事に従事する外国人を受け入れるための制度です。
対象となるのは、整備士として一定の知識と技能が必要な業務です。
そのため、外国人本人には、原則として分野の技能試験と日本語試験の合格、または関連する技能実習2号の良好修了が求められます。
また、受け入れる企業にも条件があります。
自動車整備分野では、特定技能所属機関は認証工場であることが求められており、国土交通省やその委託先の調査・指導に協力する義務もあります。
つまり、企業にとっても外国人にとっても、きちんと準備をして進めることが前提となる制度です。
特定技能には1号と2号があります。
特定技能1号は在留期間が最長5年までとなり、家族の帯同は認められていません。特定技能2号は在留期限に制限がなく、家族の帯同が認められています。
なぜ自動車整備分野で外国人材が求められているのか
自動車整備業界が抱えている課題は、単なる人手不足だけではありません。
整備士の高齢化が進み、若い世代の入職が減る中で、現場を支える中堅・若手の層が薄くなっています。
さらに、車両そのものが高度化しており、従来のガソリン車に加え、ハイブリッド車や電動車、電子制御装置を多く搭載した車の点検・整備が日常化しています。
このため、業界では「人数が足りない」だけでなく、「知識と技能を備えた整備人材が足りない」という二重の課題に直面しています。
国土交通省も、自動車整備分野で特定技能外国人を受け入れる制度を設け、評価試験や受け入れガイドを整備しています。
特定技能2号の対象にも追加されたことで、短期的な人員補充だけでなく、中長期の戦力確保という視点でも活用しやすくなっています。
特定技能「自動車整備」で従事できる仕事内容
特定技能「自動車整備」で従事できる仕事は、主に自動車の点検・整備・修理です。
出入国在留管理庁や国土交通省の案内でも、日常点検整備、定期点検整備、分解整備・特定整備が中心業務として位置づけられています。
現場の実態としては、以下のように理解すると分かりやすいです。
日常点検整備
オイルや冷却水の量の確認、タイヤの空気圧や摩耗状況の確認、灯火類の点検など、車両の日常的な状態をチェックする仕事です。
比較的基本的な作業に見えますが、小さな異常を見逃さず、事故や故障を未然に防ぐ大切な役割があります。
定期点検整備
法定点検や定期点検に基づいて、ブレーキ、ステアリング、エンジン、サスペンションなどの各部を点検する仕事です。
点検結果によって部品交換や調整が必要になることもあり、正確な判断力が求められます。
自動車整備の現場では、日常点検よりも一歩踏み込んだ専門業務といえます。
分解整備・特定整備
エンジンやブレーキなどの重要部品を分解して整備する業務です。
安全性に直結する部分を扱うため、整備士としての中核的な技能が求められます。
近年は電子制御装置に関する整備も重要性を増しており、単に工具を扱えるだけでなく、構造理解や手順の正確さも不可欠です。
付随業務について
整備工場では、部品の受発注、作業前後の洗車や清掃、車両移動、簡単な用品取付けなども日常的に発生します。
これらに関わること自体は問題ありませんが、あくまで中心となるのは自動車整備の専門業務です。
付随業務ばかりを担当させ、整備そのものをほとんど行わせない運用は適切とはいえません。
現場のイメージ
実際の現場では、朝礼や作業割り当ての確認から始まり、午前中に点検・整備、午後に部品交換や最終確認、最後に作業報告や片付けという流れが一般的です。
外国人整備士も日本人と同じ現場でチームの一員として働き、経験を積みながら徐々に担当範囲を広げていきます。
外国人にとっての魅力と企業にとってのメリット
特定技能「自動車整備」は、企業だけでなく、外国人本人にとってもメリットのある制度です。
企業側にとっては、一定の技能水準を満たした人材を採用できるため、ゼロから教える前提の採用よりも現場へのなじみが早い傾向があります。
特に技能実習から移行するケースでは、すでに日本の整備現場を経験しているため、教育コストやコミュニケーション上の不安を抑えやすくなります。
一方で外国人本人にとっては、日本の高度な整備技術や作業品質、安全管理の考え方を学べることが大きな魅力です。1号から2号へ進めば、より長い期間にわたり日本でキャリアを築く可能性も広がります。自動車整備という専門職で実務経験を重ねられる点は、将来のキャリア形成にもつながります。
特定技能1号と2号の違い
| 特定技能1号 | 特定技能2号 | |
| 技能水準 | 相当程度の知識または経験を必要とする技能 | 熟練した技能 |
| 在留期間 | 通算上限あり | 更新可能 |
| 家族帯同 | 原則不可 | 要件を満たせば可能 |
| 支援 | 企業または登録支援機関による支援が必要 | 1号のような支援義務は前提ではない |
自動車整備分野は、現在1号・2号の両方に対応しています。
1号は、まず日本で整備人材として働き始める段階、2号は、より高度な技能と現場での経験を積んだ人が次のステップへ進む段階と考えると分かりやすいです。
特定技能1号「自動車整備」を取得するには?
「特定技能」には、「特定技能1号」と「特定技能2号」の、2種類の資格があります。
「特定技能1号」は、「特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」、「特定技能2号」とは、「特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」と定義されています。
つまり、特定技能2号のほうが、より高度な技術を持った人材に適用される在留資格ということです。
特定技能「自動車整備」1号の資格を取得するためには、「特定技能評価試験と日本語試験に合格する」、または、「自動車整備分野の2号技能実習を修了する」の、いずれかを満たす必要があります。
特定技能1号の「自動車整備分野特定技能評価試験」に合格する
外国人材が特定技能「自動車整備」1号を取得するための一つの方法が、「特定技能評価試験と日本語試験に合格すること」です。
本来、「特定技能」は、即戦力となる人材を確保するための在留資格です。
そのため、資格の取得を希望する外国人は、一定程度の専門技能を持っていることを証明しなければなりません。
そこで用いられるのが、特定技能のために作られた技能試験「自動車整備分野特定技能評価試験」です。
試験の詳細は以下「自動車整備」分野特定技能1号評価試験とは?」で解説します。
自動車整備士技能検定試験3級に合格する
自動車整備分野特定技能評価試験のほかに、国土交通省が行う「自動車整備士技能検定試験」の3級に合格することでも、特定技能の在留資格を取得することができます。
両者の難易度はほぼ同レベルであり、「エンジンオイルやギアオイルの交換、タイヤ交換、点検整備など、各装置の基本的な整備を一人で行うことができるレベル」です。
「自動車整備」分野の技能実習2号からの移行
外国人材が特定技能1号「自動車整備」を取得するもう一つの方法は、「自動車整備分野の技能実習2号から移行する」というものです。
「技能実習2号」とは、1993年に導入された「技能実習」ならびに「研修」制度のことです。
自動車整備士技能検定試験3級に合格していない人は、自動車整備の技能実習2号を修了して技能水準を満たしていると判断された場合に、無試験で「特定技能」へ移行することができます。
日本語試験に合格する
外国人材が日本での就業や生活が可能な日本語能力を持っているか、日本語の試験によって確認します。
外国人材が、特定技能「自動車整備」を取得するには、日本語能力試験JLPTのN4以上、もしくは国際交流基金日本語基礎テストに合格する必要があります。
その他、日本語教育の参照枠」のA2相当以上の水準と認められる試験に合格することで証明することも可能です。
「日本語能力試験」
日本語能力試験のレベルは5段階で、基礎のN5から幅広い場面で使われる日本語のN1までがあります。
要件であるN4は、「基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる」「日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる」というレベルです。
試験は通常、年2回開催されます。
「国際交流基金日本語基礎テスト」
日本の生活場面でのコミュニケーションに必要な日本語能力を測定し、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力」があるかどうかを判定するテストです。
試験は複数回開催されています。
1号の特定技能評価試験とは?
自動車整備分野特定技能評価試験とは、一般社団法人日本自動車整備復興会連合会が行う技能試験です。
外国人材が一定の技能や知識を持ち、即戦力となりうるかを確認するために行われます。
ここでは「自動車整備」分野の特定技能評価試験について解説します。特定技能試験の制度や受験資格等については以下の記事をご覧ください。
試験の範囲
試験の範囲は、自動車のシャシ、エンジンに関し、次に掲げる範囲とする。
①学科試験の科目
- 構造、機能及び取扱法に関する初等知識
- 点検、修理及び調整に関する初等知識
- 整備用の試験機、計量器及び工具の構造、機能及び取扱法に関する初等知識
- 材料及び燃料油脂の性質及び用法に関する初等知識
②実技試験の科目
- 簡単な基本工作
- 分解、組立て、簡単な点検及び調整
- 簡単な修理
- 簡単な整備用の試験機、計量器及び工具の取扱い
特定技能評価試験の形式、問題数及び試験時間
試験の形式はCBT方式で問題数及び試験時間は、次のとおりです。
①学科試験の形式、問題数及び試験時間
- 出題形式は、真偽法(○×式)
- 問題数は30問、試験時間は60分
②実技試験の形式、問題数及び試験時間
- 出題形式は、いくつかの課題について作業試験または図やイラスト等を用いた状況設定において正しい判別、判断を行わせる判断等試験により行います。
- 問題数は3課題で、複数の設問を設け、試験時間は20分
合否の基準
学科試験は正解数が出題数の65%以上、実技試験は得点合計が60%以上
特定技能2号を取得するには?
試験情報は実施機関である一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会や国土交通省のHPに掲載されます。
特定技能2号の申請要件は以下の2つを満たす必要があります。
【特定技能2号申請要件】
- 「自動車整備分野特定技能2号評価試験」又は「自動車整備士技能検定試験2級」に合格
- 地方運輸局長の認証を受けた自動車整備工場で3年以上の実務経験
「2」の証明にあたっては、日整連が定める実務経験証明書を併せて提出する必要があります。
自動車整備分野特定技能2号評価試験とは?
自動車整備分野特定技能2号評価試験は2024年7月16日から開始しました。
特定技能2号評価試験の範囲は、自動車のシャシ、エンジンに関し、次に掲げる範囲としています。
①学科試験の科目
- 構造、機能及び取扱法に関する一般知識
- 点検、修理、調整及び完成検査の方法
- 整備用の試験機、計量器及び工具の構造、機能及び取扱法に関する一般知識
- 材料及び燃料油脂の性質及び用法に関する一般知識
- 保安基準その他の自動車の整備に関する法規
②実技試験の科目
- 基本工作
- 点検、分解、組立て、調整及び完成検査
- 一般的な修理
- 整備用の試験機、計量器及び工具の取扱い
試験と技能のレベルは、「自動車整備士技能検定試験2級」と同等レベルです。
試験は基本的に日本語、漢字にはルビが付きます。
専門用語等については注釈とし英語や試験実施国の現地語などの他の言語が記載される場合もあります。
- 開催機関:一般社団法人日本自動車整備振興会連合会
- 開催場所:日本国内、フィリピン、ベトナム等
- 開催日程:最新日程はTest Dates Prometricのホームページでご確認ください。※毎日実施予定
なお、受験にあたっては、道路運送車両法第78条に基づく地方運輸局長の認証を受けた事業場における3年以上の実務経験が必要となります。
特定技能「自動車整備」の外国人材を雇用するための条件
ここまでは、外国人に求められる要件について解説してきました。
一方、自動車整備を行う企業が特定技能外国人を採用するには、どうしたら良いのでしょうか。
特定技能外国人を雇用する企業のことを、「特定技能所属機関(受入機関)」と呼びます。
建設業で特定技能外国人を受け入れる特定技能所属機関(受入機関)は、次の条件を満たす必要があります。
地方運輸局長の認証を受けている
外国人を受け入れる事業所は、道路運送車両法(昭和26年法律第185号)第78条第1項に基づき地方運輸局長から認証を受けた事業場を有していなければなりません。
支援体制の義務を果たす
特定技能所属機関(受入機関)は特定技能外国人に対し、以下のような支援を行うことが義務付けられています。
<受入機関に課せられる、特定技能外国人に対する義務の一例>
事前ガイダンス
出入国の際の送迎
住居確保
生活オリエンテーション
公的手続き
日本語学習の機会の提供
相談・苦情への対応
日本人との交流促進
定期的な面談と行政機関への通報 など
ただし、受入機関はこの支援業務を「登録支援機関に委託する」ことができ、また、委託しなければならない場合もあります。
自社企業がどのパターンに当てはまるのかについては、下記の記事で解説しているので併せてご覧ください。
特定技能協議会への加入と同協議会に対し必要な協力を行う
特定技能所属機関(受入れ機関)は、自動車整備分野特定技能協議会へ加入が必須です。
自動車整備分野特定技能協議会は、特定技能「自動車整備」制度の適正かつ円滑な運用を可能にするために設立された組織であり、受入れ機関や登録支援機関、有識者、自動車整備事業者団体、関係省庁などで構成されています。
受入れ機関は、受け入れ予定の特定技能外国人の在留諸申請前に協議会に加入し、加入後は必要な協力を行う必要があります。
まとめ
特定技能「自動車整備」は、自動車整備業界の深刻な人手不足に対応しながら、外国人が日本で専門職として働く道を広げる制度です。
企業にとっては、即戦力人材の確保や中長期の戦力化につながり、外国人にとっては、日本の高度な整備技術を学びながらキャリアを築ける点が大きな魅力です。
一方で、受け入れには試験、在留資格、認証工場の要件、支援体制など、押さえるべきポイントが多くあります。
制度を正しく理解し、外国人・企業の双方にとって無理のない形で準備を進めることが、長く安定した雇用につながります。
特定技能「自動車整備」の採用や申請でお悩みの方へ
受け入れ要件の確認、雇用契約の整理、必要書類の準備、支援体制の整備まで、実務では細かな確認が必要です。
行政書士カラフル事務所は登録支援機関でもあり、特定技能外国人の受け入れに関するご相談を承っています。